Metallica / メタリカ

バンド紹介

metallica


(執筆:長谷川氏)

世界で最も有名で影響力も強く、ファンも敵も最も多く、最も商売が上手く、ライヴにおける演奏が最も危ういメタル・バンド。それがMETALLICAである。

今でこそメタルという枠のみならずロック界の大御所というポジションに居座っている彼らだが、1983年のデビュー当時、その速くてやかましい音楽は殆ど受け入れられず、「こんなものは音楽ではない」と各メディアに干され、良識派HR/HMファンからは軽蔑され、ついてきたのは頭の悪そうな狂信的ファンのみという、中々に素晴らしい状況であった。

しかし、彼らの繰り出す強力で全く新しい音楽は着実に信者を増やし、1986年、3rd「MASTER OF PUPPETS」が全米チャートトップ50に突然浮上する。この成功をきっかけに勢いづいたMETALLICAだったが、このアルバムのツアー中にクリフ・バートン(bass)が事故死してしまう。

バンドは死を乗り越え、即座に後任ベース、ジェイソン・ニューステッドを迎え活動を続行。そして1991年、全米初登場一位、通算売り上げ1500万枚以上のキチガイアルバム「METALLICA(通称ブラック・アルバム)」で頂点に上り詰める。この時期行われたGUNS 'N' ROSESとのダブル・ヘッドライン・ツアーは色々な意味でとんでもないものであったという。

その後「LOAD」「RELOAD」といった「ロック・アルバム」を発表して物議を醸したり、オーケストラと共演したり、クソみたいなライヴ音源をエサにしたしょうもないシングルを乱発してみたりと多彩に活動していた彼らだったが、ジェイソンいじめ問題(マジ)が深刻化し、彼は脱退。

2001年頃ジェイムズ・ヘットフィールド(g.vo)もアル中で入院してしまい、残されたラーズ・ウルリッヒ(dr)とカーク・ハメット(g)は途方に暮れる。

余談だが、もしこの二人だけでアルバムが作られていたとしたら、本当にとんでもない作品が生まれていたと思う。

ちょっと話がズレたが、2003年にジェイムズが復活、リハビリ・アルバムとも言うべき「ST.ANGER」を送り出す。そして新ベーシストにロバート・トゥルージロを迎えバンドは完全復活を果たし、今に至っている。

これまでの「メタル」という概念を破壊したMETALLICA。

LINKIN PARK、KORN、SLIPKNOTといった昨今のヘヴィ・ロック連中の下地はMETALLICAが築いたと言っても過言ではないだろう。

そしてテクニックを超越した(してしまった)カッコ良さを世の中に示した最強のバンドもまた、METALLICAなのだ。

唯一無二かつ強力なリフ、変なギターソロ、そしてもう色々とギリギリのドラミングを味わうべし。

メンバー

ヴォーカル、ギター ギター ベース ドラム
結成時 ジェイムズ・ヘットフィールド デイヴ・ムステイン(→メガデス) クリフ・バートン ラーズ・ウルリッヒ
1st〜3rd カーク・ハメット
4th〜7th ジェイソン・ニューステッド
8th〜 ロバート・トゥルージロ

ディスコグラフィー

  • KILL 'EM ALL(1983)←1st
  • RIDE THE LIGHTNING(1984)←2nd
  • MASTER OF PUPPETS(1986)←3rd
  • ...AND JUSTICE FOR ALL(1988)←4th
  • METALLICA(1991)←5th
  • LOAD(1996)←6th
  • RELOAD(1997)←7th
  • GARAGE INC(1998)
  • S&M(1999)
  • ST.ANGER(2003)←8th

もっと詳しく知るためのリンク集

執筆者のオススメ曲

WHIPLASH(KILL 'EM ALL)

多分曲を絞れないので、各アルバムを紹介しつつ、そのアルバム内でこれはという一曲をピックアップして紹介していこうと思う。

さて、全体としてバカ丸出しの1stからはWHIPLASHをチョイス。とんでもなく単純でただ突っ走っているだけの曲だが、バカが作ったバカでも解る曲なので、ライヴでもバカみたいに盛り上がるのである。

歌も演奏も酷いので、今の彼らを知っている人が聞くとブッ飛ぶことは保証します。


FIGHT FIRE WITH FIRE(RIDE THE LIGHTNING)

イントロのクラシック・ギターから一転、猛烈なリフが畳み掛ける曲。速い。

前作の頭の悪さはどこへやら、激しさの中にも構成美が光る名曲が多い2ndだが、この曲はその集大成とも言えるだろう。ムカついた時に聴くのをお薦めする。

METALLICA史上1、2を争う攻撃的な一曲だ。

ちなみにこの曲、シンバルが変な所に入っていて独特なリフの響きも相乗し、なんとなく流し聞きしていると表打ちに聞こえるのだが、実は裏打ち。しかも歌が裏にのみ入っていてなおかつ速いので、いざバンドでやってみようとなると、非常に厄介な曲なのである。


MASTER OF PUPPETS(MASTER OF PUPPETS)

このアルバムもまさに名曲揃いで選曲に悩むところであったが、筆者の個人的思い入れからこれを選曲させていただく。

何と言うか、研ぎ澄まされた刀のような曲である。曲の尺は長いのだが、一切無駄が無い。全てダウン・ストロークで繰り出される強靭なイントロ・リフ、クリフが残したメロウ・パートを挟んだ流れるような展開。

とにかく衝撃的な曲であった。それ以上の言葉が見つからない。

しかし初期METALLICAの音源はどれも音質がよろしくないので、オーケストラとの共演アルバム「S&M」に収録されているバージョンをお薦めする。

私はそれを聴いてしまったことで人生が狂った。


ONE (...AND JUSTICE FOR ALL)

このアルバムの音質はカスカスでそこらのインディーズバンドよりも酷いのだが、曲は良い・・という訳でもなく複雑怪奇な珍曲が並び、好きな人はえらく気に入るが万人向けではない作品。

ここからは無難にONEを選曲。ライヴでも定番である。

哀愁漂う独特のアルペジオと歌が続き、中盤から大きく展開、激しいリフとドラムの応酬で終わる。

こちらも前述の「S&M」バージョンを強くお薦めする。涙が出る程素晴らしいので。

余談だが、この曲の後半はDREAM THEATERあたりに確実に影響を与えたであろうフレーズが各所で炸裂しています。


ENTER SANDMAN(METALLICA)

言わずと知れた超有名曲。ミドル・テンポでうねるリフが心地良い。

個人的にこのアルバムはもっさりしているのであまり好きではないが、この曲にはロックの王道とも言うべき魅力が詰まっており、これは例外である。

ちなみにこの曲のリフを作ったのはカークだという衝撃的事実は、あまり知られていない。このアルバムから速い曲は姿を潜め、METALLICAは重さとグルーヴを強調する方向へと進んでいった。

更に余談だが、この作品のサウンド・プロダクションは前作とは打って変わって素晴らしく、全パートが本当にクリアに聞こえる。私は作品自体はあまり好きではないが、音質を楽しむためだけに聴く時もしばしばである。かのザック・ワイルドに「あれほど完璧なミックスのアルバムは他に存在しない」と言わしめたほど。その手の音質マニアの方は是非一聴を。

ちなみに日本盤ボーナス・トラックのカヴァー音源「SO WHAT」も必聴。


UNTIL IT SLEEPS(LOAD)

この作品は前作より更に落ち着いた作風となっている。スピード・チューンは一切収録されておらず、リフよりも横ノリとジェイムズの歌を全面に押し出し、最早初期とは全く異なったバンドになっている。それ故にコアなファンが忌み嫌う作品で発表当初は大論争を巻き起こし、評価は真っ二つに割れるが、私はこれは「ロック・アルバム」としてかなり好きだ。その中でも特に好きなのがこの曲。

日本でも車のCMに使われていたので、耳にしたことがある人も多いだろう。

メロウかつヘヴィ(音像ではなく)な曲で、ジェイムズの歌をたっぷり堪能できる。カークも珍しくいい仕事をしており、ここでのギターソロは素晴らしい。

個人的にはベスト5には入る程好きな曲。


PRINCE CHARMING(RELOAD)

前作と方向性はさほど変わらないが、こちらの方がアップテンポでノリやすい曲が多い。さてFUELじゃなくてなんでこんな曲なんだと仰る方も多いでしょうが、この曲はハード・ロックを少しでも通った人間にはクリティカルヒットする曲なのだ。

歌しかりリズムしかりコード進行しかり、ハード・ロックのオイシイ所がぎっしり詰まっている。

ライヴでは一回も披露されておらず、恐らく本人達も忘れているであろう超マイナー曲だが、私は自信を持ってお薦めしたい。


WHISKEY IN THE JAR(GARAGE INC)

この作品はカヴァー・アルバムで、新録カヴァー群に「JUSTICE」発表前に出されていたカヴァーEP「GARAGE DAYS(廃盤)」と、各種シングルに収録されていたカヴァー曲を全て加えた二枚組の作品だ。

WHISKEY IN THE JARの元ネタはTHIN LIZZY。

とは言ってもこの曲は元々アイルランドの民謡で、それっぽいメロディがそこかしこで聞こえる。

メジャー進行の明るい曲だがそれ故に親しみやすく、普通に良い曲である。

しかしこんな曲を歌っておきながらアル中になってしまうジェイムズ。

前フリだったのだろうか。


THE CALL OF KTULU(S&M)

オーケストラとの共演ライヴ盤。原曲は「RIDE〜」に収録されているインスト大曲。

元々ダークかつ荘厳な曲だがなおかつそこにオーケストラが被さり、更にドラマティックな曲へと生まれ変わっている。

ここから「MASTER〜」へなだれ込む展開はまさに鳥肌モノである。

このアルバムは必ずしもベスト選曲ではないが非常に良い作品なので、同内容のビデオと共にお薦めしたい。私もここから入り、今のようなマニアになってしまった。


ST.ANGER(ST.ANGER)

長いインターバルを置いて現時点での最新作。私は発売日にバイトを空けた。しかし発売日が前倒しになり、またバイトを空けた。

ここで聴けるのは「KILL EM〜」のようなアホでアグレッシヴなMETALLICA。

しかし初期の攻撃性は帰ってきているが、またまた賛否両論。確かに全体的に曲が無駄に長く、ジャムって生まれたフレーズをそのままつなぎ合わせてムリヤリ曲にした感は強く、結果として一本調子でとりとめのないアルバムではある。

そして一番の批判対象となるその音像だが、これは好き嫌い分かれるところでしょう。

私はこういう生音そのままの音作りは好きだが。なんだかんだでこの音質を楽しんで聞く事も多い。

ちなみにカークは「アルバム自体がデモなんだ!」と嬉しそうに語っていた。

ここからはこのタイトル・トラックを選抜。各所でかなり流れていたので、知っている人も多いだろう。

破壊力に満ちた変拍子リフが一気に疾走、突然メロウになり、また疾走。これの繰り返しだが、解りやすくてノリやすいのでライヴでは当然盛り上がる。無駄に速い。

この作品に付いているDVDには、新メンバーのベースを弾くゴリラの映像が収録されている。


(2006.4.8 kota/hasegawa)

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